第95回 箱根駅伝、王者のプライドが震えた日・・・。


ひとつの時代を締めくくる、平成最後の箱根駅伝・復路のスタートが近づいてきました。

 

完全なる包囲網の中、V5を狙う青山学院大学に歴戦の大学がそれを阻止せんと襲い掛かります。

 

往路が終わった時点で、1位の東洋大学とのタイム差は2位の東海大学が1分14秒

 

6位の青山学院大学は、なんと5分30秒という有様。

 

専門家に言わせると、ここでの青山学院の勝率はわずか10パーセントあるか、ないか。

 

 

昨日、小雪の舞った箱根・芦ノ湖駐車場は朝から快晴。

 

下りのスペシャリストたちが今や遅しとスタートを待ちわびています。

 

では、6区での山下りのスタートです。

 

第95回 箱根駅伝、復路スタート

 

ここ6区が大きな勝負のカギをにぎる事は、誰の目にも明らかです。

 

緊迫した空気の中、東洋大学の今西 駿介選手が飛び出しました。

 

揺るぎないタイムを持っている今西選手ですが、あえてハイペースで逃げる作戦。

 

東洋大学はこの6区で決めるつもりでした。

 

2位の東海大学、中島 怜利選手が後を追います。

 

5分30秒遅れで青山学院の小野田 勇次選手もスタートしていきます。

 

ここ6区において、スピードランナーの競演が始まりました。 順調に飛ばす、今西 駿介選手。

 

このペースで逃げられては、もはや東洋大学の復路優勝を疑うものはいなかったはずです。

 

 

しかし、ここで青山学院の小野田 勇次選手が順位を上げてきました。

 

結果、区間新記録となった走りは終盤に於いて、順位を6位から5位へと押し上げました。

 

くすぶり続けていた王者のプライドは消えていませんでした。 圧巻、圧巻、圧巻!

 

7区のある小田原中継所に真っ先に飛び込んできたのは、順位を守った東洋大学でした。

 

続いて、順当に東海大学、そして3位は駒澤大学となりました。

 

 

海風薫る7区では、6区の走りをそのまま再現するように、逃げる東洋、追う東海のレース展開。

 

往路勝者の東洋大学は、キャプテンの小笹選手。 初優勝を狙う東海は、阪口 竜平選手を投入。

 

予断を許さないレース展開が進む中、

 

小田原中継所であった1分14秒の差は平塚中継所に着くころには4秒差まで縮められます。

 

 

そして、ここでも王者は牙を隠しませんでした。

 

青山学院の7区走者である、林 奎介選手はオーバーペースともいわれる走りで5位だった順位を

 

3位にまで伸ばしてきました。

 

往路で思うような成績を残せなかった、4区の岩見選手と5区の竹石選手に笑って帰って欲しかった

 

という思いが、その走りに強く現れていました。

 

8区のスタート地点でもある、平塚中継所に選手がなだれ込んできます。

 

この時点での順位は1位が東洋大学、2位が東海大学、そしてついに3位に青山学院大学が顔を出します。

 

ここから、やっと三つ巴の戦いが始まります。

 

 

ここ8区においては、すさまじい首位争いが行われていきます。 

 

もうほとんど差のないリードを守って東洋大学、1年生の鈴木 宗孝選手が逃げ始めます。

 

それを追う東海大学の小松 陽平選手。

 

ここで首位が入れ替わるかと思われた時、小松選手は鈴木選手の後ろにピタリと付きます。

 

 

当然、箱根駅伝経験のない東洋大学の鈴木 宗孝選手には、非常なプレッシャーとなった事でしょう。

 

この後、この並走は遊行寺手前まで続けられます。

 

運営管理者が乗る伴走車もあまりに距離が近いため、アドバイスを出せずにいます。

 

ここでのアドバイスは、もちろん敵にも聞かれるからです。

 

通常であれば、このような場面では先行してペースメーカーになるのを恐れ、下がって様子を見るべきですが

 

東洋大学の酒井監督はひとつの賭けに出ました。

 

 

「ペースを上げて振り切れ」 そう、ここでお互いが譲り合っていたら、ひたひたと忍び寄る

 

3位の青山学院にチャンスをくれてやる事になるのを分かっていたからです。

 

そして、ついに遊行寺手前で東海大学の小松 陽平選手がトップに躍り出ます。

 

抜かれた鈴木選手は極度のプレッシャーに精神が削られたあとでした。

 

 

単独、一人旅を続ける青山学院の飯田 貴之選手も健闘しています。

 

 

第95回 箱根駅伝、9区、10区の終盤へ

 

8区のゴール地点でもある戸塚中継所に最初に飛び込んだのが、区間新記録を出した東海大学の

 

小松 陽平選手。 そして東洋大学の鈴木 宗孝選手。 3位に青山学院の飯田 貴之選手が続きます。

 

9区は、花の2区の復路コースにあたるため、別名「裏エース区間」とも呼ばれています

 

10区でスパートをかけても間に合わないのです。

 

そのため、9区は各チームともキャプテンの占める割合が多くなっています。

 

 

悲願の初優勝を狙う東海大学はキャプテンの湊谷 春紀選手を投入しました。

 

最後の巻き返しを狙う東洋大学は中村 拳梧選手を、そして青山学院は前回の出雲駅伝でも

 

区間賞を取った吉田 圭太選手を起用しています。

 

 

9区に入り、高ぶった気持ちもやっと沈静化してきたと思ったのも、つかの間4連覇の王者が

 

また大きな揺さぶりをかけてきました。

 

青山学院の吉田 圭太選手が2位をゆく東洋大学の中村 拳梧選手の背中を捉え始めます。

 

 

10区、鶴見中継所では襷(たすき)がアンカーへと渡されていきます。

 

1位、東海大学。2位にはナント青山学院大学が入ってきました。 そして東洋大学の順に到着です。

 

まだまだ勝負を捨てていない青山学院でしたが、この時のトップの東海大学とは3分43秒の差。

 

 

そして、東海大学のアンカーには向かい風が吹く事を計算して、向かい風に強い郡司 陽太選手を

 

起用するという戦略がありました。 追う青山大学の鈴木 塁人選手、東洋の大澤 駿選手。

 

ですが盤石の構えを取る東海大学の前で、全ての道は閉ざされました。

 

結果は往路優勝、東洋大学。 復路優勝、青山学院大学。 そして総合優勝東海大学に決まりました。

 

復路優勝を最後にさらった青山学院大学。 ここ95回大会においても王者の爪痕は残せました。

 

 

終わりに

 

第95回 箱根駅伝は初となる東海大学の総合優勝で幕を閉じました。 おめでとうございます。

 

今回も多くのドラマが目の前に繰り広げられました。

 

そして、レース後に走ってきたコースにお辞儀をする選手たちの姿に、胸が熱くなりました。

 

10区、鶴見中継所において繰り上げスタートが行われました。

 

通常であれば、何も書かれていないたすきをかけるのですが、最後にゴールに飛び込む(たすき)

 

には母校のマークが示されています。 ただ、その(たすき)には仲間の汗がしみ込んでいません。

 

 

きっと、このままでは終われません。

 

その気持ちがあるかぎり来年の箱根駅伝も熱い、熱いものになる事でしょう。

 

では全ての選手のみなさんのこれからの武運を祈って、終わりにしたいと思います。

 

 

 

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